1. 企業概要
錦界発電所は、石炭、電力、運輸、化学などエネルギーバリューチェーン全体をカバーする大規模エネルギー企業グループに属しています。当グループは、石炭生産、火力発電、風力発電、石炭液化・化学事業において業界をリードする企業の一つです。
錦界発電所は大規模な「石炭火力一体化」プロジェクトとして知られています。温室効果ガス排出量は、2020年度が11,066,401トン、2021年度が17,413,185トン、2022年度が15,331,924トンのCO2でした。
2. プロジェクト概要
錦界発電所のCCUSプロジェクトは、2019年11月に建設を開始し、2021年1月に設置を完了、168時間の試運転を経て純度99.5%の工業用液体二酸化炭素の連続生産に成功しました。石炭火力発電所からの排ガス中における大規模CO2回収を実現し、現在では石炭焚き発電所における燃焼後CO2回収と石油増進回収・貯蔵を組み合わせたフルチェーンの大規模実証プロジェクトとして運用されています。
2022年には、CCUS実証プラントの長期安定運転に向けた保守計画及び保証措置を策定し、信頼性の向上を図りました。さらに、デジタル化やスマート化などの技術を活用し、コスト削減や生産性向上のための技術分析を積極的に実施。システムプロセスや設備運転パラメータの最適化を通じて、安全かつ経済的な運転方法の確立に取り組んでいます。
3. 構築内容
導入したデジタル技術としては、主にスマート制御、データ管理、デジタルツインが挙げられます。
スマート制御では、錦界発電所1号機(600MW亜臨界圧)を対象に、制御システムにHollySysのDCSを採用し、設備の運転状態をリアルタイムで監視・自動調整することを実現しました。
データ管理では、Realinfo SCADA / Iotプラットフォームと時系列データベースを採用し、統一されたCCUS生産データプラットフォームを構築。各種装置・設備からのデータを収集、保存、分析、表示し、データ共有を可能としています。
デジタルツイン技術を用いてCCUSの各装置設備及び生産ワークフローの3Dモデリングを実施。標準データインターフェースを通じて、Realinfo時系列データベースが収集する生産プロセスデータをリアルタイムに取得・重畳表示し、3D空間内で可視化します。これにより、時間軸に沿ったデータの変化や動向、傾向を明らかにします。さらに、複数変数間の関係性も表示可能であり、作業員がデータ間の相互影響や関連性をより良く理解するのに貢献します。最終的には、視覚効果に優れ包括的な情報提示を通じて、発電所担当者がより直感的かつ包括的、深くデータを洞察し、CCUS生産データに潜む法則や潜在価値を発見することを支援します。

Realinfo SCADAは、OPC DAドライバーに基づきHollySys DCS制御システムのデータをリアルタイム収集し、単方向ゲートウェイを経由して管理ネットワーク外側のクロスプラットフォームリアルタイムデータベースサーバーへ伝送します。このサーバーはWebサーバーも兼ね、構築した各生産フロー図とデータを企業LAN内に統一してリアルタイム公開します。同時に、デジタルツインシステムとのデータ連携を実現し、最終的には監視大画面によるB/S閲覧を統一して行います。
4. システム機能
4.1 デジタルツイン概要図
デジタルツインシステムは、Realinfo SCADA / Iotプラットフォームと時系列データベースが提供するRest APIを基に生産データを取得し、現場、フロー図監視データ、デジタルツインシステムデータのリアルタイム同期を実現します。

4.2 プロセスフロー図
主要プロセスフローの全体像を参照し、DCS制御システムの設定グラフィックスと組み合わせることで、CCUS全体の主要プロセスフローにおけるデータ監視を実現しています。主要プロセスとしては、CO2回収システム、吸収塔システムなど、20枚以上の主要プロセスフロー監視図を用意し、各監視図では同時にキーデータを出力し、システムユーザーが確認しやすい設計としています。

4.3 データ限界警報及び色変化
収集したデータが設定した警報しきい値を超えた場合、図面上の数値の色が変化し、生産状況をより直感的かつタイムリーに調整できるようにしています。
4.4 トレンド分析
フロー図上の任意の計測点データをクリックすると、そのポイントデータのトレンド分析が表示されます。ユーザーは必要に応じて過去の任意の期間における履歴曲線を照会でき、さらなる最適化調整に役立てることができます。

5. プロジェクト効果
Realinfo SCADA / Iotプラットフォームと時系列データベースは、本CCUS実証プロジェクトにおけるデジタル応用の核心的なデータプラットフォームとして、その他の成熟した先進的なデジタル手段と組み合わせ、スマート管理・意思決定プラットフォームを開発。データの相互接続と共有、CCUSフロー全体の可視化表示、スマート警報分析を実現し、発電所のコスト削減と効率向上、人的資源配置の最適化を実現するための重要な支援を提供しています。